2019-10-29

よみせ通りにある延命地蔵尊の左の建物との間には、ほんの僅かな隙間がある。人どころか、猫ですら入れるような隙間ではない、ぐりとぐらの絵本の厚さくらいの幅だ。

昨日…、というか一昨日、ひょうたん池で酒をしこたま飲んで、もう日が変わるぞと店主に教えられて、帰る途中のことだった。延命地蔵尊を赤く引き立たせる灯りも既に消えているのを背に、路地に入ろうとした時、私はふと違和感を感じた。

灯りの消えた延命地蔵尊を振り返る。

違和感の正体は光の消えた提灯でも、扉の閉まった小さなお堂でもなく、左の建物との隙間だった。

人が通れるほどの道があったように思う。

あ...

2018-3-19

久し振りに暗智狐五郎の探偵事務所に行った。

暗智狐五郎は、千駄木の屋敷に住むネクラな探偵だ。

この屋敷というのがとんでもなく大きい。狐五郎の祖父はアンチ製薬の創業者で、父親もそれを継いで拡大したが、一番信頼していた役員に裏切られる形で、大手製薬会社に吸収された。

業績の良い会社だったため、老後を悠々自適に暮らせるだけの金は手元に残ったが、会社を手放した翌年に父親と母親は事故死。一人息子の狐五郎は両親からそこそこの遺産と大きな屋敷と人間不信を引き継いだ。

人付き合いが苦手。屋敷の大きな門には小さく『暗智狐五郎事務所』という札が掲げられている。...

2017-5-25

久し振りに書く。パスワードを忘れて思い出すのに苦労した。

なんでもかんでもパスワード。電子版の面倒なところだ。

いまさらだが、『妖怪』というものの研究はなかなか難しい。

関連する文献は膨大にあるし、日本各地に伝承として残っている妖怪の話は数多あるのに、それを組み合わせて肉付けしていくうちに実体が失われていくような気がする。両手いっぱいに水をすくったつもりが口に運ぶ頃には一滴もなくなってしまっているかのような感覚だ。

しかし、私には強い味方がいる。付喪神たちだ。本人のことは本人に聞けばいい。

だが「よくわかんない」と言われた。

人間に知られてはい...

2016-11-17

家に付喪神がいる。この状況となんてことなく受け入れているが、改めて考えると実に奇妙な光景だ。

最近料理を覚えたらしく、食材を置いておくと、料理になっている。最初は驚くほど不味かったが、最近はなかなか美味い。洗濯や掃除等も楽しそうにやっている。なんとも便利なことだ。

もともと幽霊屋敷等と言われて、好奇心半分に子供たちが庭先に潜り込んでくるのだが、今日は、中島みゆきを歌いながら物干しざおにシーツを干しているでんでん太鼓に遭遇したようで、悲鳴をあげて飛び出して行った。やはり子供たちには視えるのだろう。

回覧板を届けに来るついでに様子をさぐりにく...

2016-6-09

妖怪はあれからよく出現するようになった。

妖怪といっても色々と種類はあり、河童や天狗の類ではない。

道具の妖怪で付喪神という。付喪神がなんたるかの説明をここで長々とするつもりはない。今度レポートとしてあげることにする。

彼らがなんで見えるようになったのか、心当たりはひとつある。

確か2月だったか、前の家主が残しただろうものが納戸にまるまる残っていたわけだが、何か使えるものがないかと欲を出し、漁ってみた。まあ、これが面白いものがたくさん出てきたのだが、それはさておき、その中で古びた汚い神鏡が出てきた。近くに神棚や他の神具があるわけでもなく、ぽ...

2015-3-11

筆不精ゆえ日記とやらは得意ではないが、念のため記録を残して行こう。

今日、妖怪を見た。幽霊ではない、妖怪だ。

子供の頃からそういったものとは無縁で、だからこそ人が遭遇する未知なるものの研究をしつづけてきた。

この研究所の建物を買ったときも、いわゆる霊感のある知人に「うようよいる」と青い顔で言われたものだが、全くもって何も感じなかった。

だが、今日、妖怪を見た。台所に着物の人がいて、ついに幽霊かと思ったら、頭が赤提灯だった。

「暖かくなってきたし、コタツはそろそろ片づけた方がいいよー」

余計なお世話だ。まあ、髪を振り乱した血まみれの幽霊でなくて良...

Please reload

最新記事

October 29, 2019

March 19, 2018

November 17, 2016

June 9, 2016

March 11, 2015

Please reload

アーカイブ
Please reload