妖怪は妖怪のことを知っているか?
久し振りに書く。パスワードを忘れて思い出すのに苦労した。
なんでもかんでもパスワード。電子版の面倒なところだ。
いまさらだが、『妖怪』というものの研究はなかなか難しい。
関連する文献は膨大にあるし、日本各地に伝承として残っている妖怪の話は数多あるのに、それを組み合わせて肉付けしていくうちに実体が失われていくような気がする。両手いっぱいに水をすくったつもりが口に運ぶ頃には一滴もなくなってしまっているかのような感覚だ。
しかし、私には強い味方がいる。付喪神たちだ。本人のことは本人に聞けばいい。
だが「よくわかんない」と言われた。
人間に知られてはいけない等の妖怪ルールでもあるのかと邪推したが、本当にわからないようだった。
「じゃあ、人間についてどこまで知ってるの?」と逆に聞かれた。
確かに。私は人間だが、人間について正しく話をするのは膨大な知識が必要になる。
正確に話せるとすれば、私自身のことだろう。いや、それですら記憶というものはひどく曖昧で、曖昧な部分は適当に補完して話をすると考えると、正確とは言えない。人間より長い年月を重ねている妖怪たちにとっては、昔のことなど、もっと曖昧だろう。
人間は学校に行くことが義務付けられ、歴史や人体のしくみ等、ある程度のところは知識としてあるが、妖怪たちは学校のようなところは存在しているものの、通うかは自由なようなので、人間がもつ人間についての知識よりも、ずっと少ないだろう。
それがわかったというのも、またひとつの収穫ではある。