アマビコ

この研究所には前の家主の持ち物がまるまる残された『納戸』がある。


昨日、何かの鳴き声のような古い扉が軋むような音が聞こえて『納戸』に入ったら、猿がいた。 正確に言うと、猿ではなく、猿のようなものだ。まるでいじけた子供のように、毛むくじゃらの身体を丸めて、キィキィと言っている。 いつの間にか後ろにいた化け提灯の赤丸がウンウンと頷いており、妖怪同士なだけに言葉が通じるようだ。 アマビコという妖怪らしい。 赤丸が言うには「自分は、姿を見た者の無病長寿を約束している。アマビエは姿を見た者がどうなるかハッキリとしていないのに広まっている。今の世はハッキリと約束しない方が好まれるのか」とブツブツ言っているらしい。 なんだか心が痛いボヤキである。 とりあえず、しばらくそっとしておこう。